サンウルブズ2年目の進歩──来季と2019年に向けてさらなる成長曲線を描けるか ~2017シーズン総括~

スーパーラグビー2017 - サンウルブズ2年目の進歩──来季と2019年に向けてさらなる成長曲線を描けるか ~2017シーズン総括~

最終節でブルーズに勝利し有終の美を飾ったサンウルブズ(撮影/齋藤龍太郎)

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 日本を本拠地とする、スーパーラグビー参入2年目のヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ(以下サンウルブズ)の2シーズン目の挑戦は終わった。

 4月8日にブルズ(南アフリカ)に21-20で勝利した後は敗戦が続いたが、7月15日の最終節でブルーズ(ニュージーランド)に48-21で快勝し、2勝13敗で総勝ち点12、所属するアフリカ1カンファレンスでは最下位だったが、全体ではレベルズ(オーストラリア/総勝ち点9点)を上回り、17位でシーズンを終えた。

 まず、参入1年目の成績を簡単に振り返っておきたい。昨シーズンはジャガーズ(アルゼンチンン)に勝利したものの、1勝13敗1分で、総勝ち点9で残念ながら最下位でシーズンを終えた。参入2年目は、どこまで1年目の成績に上積みできるか、そしてスーパーラグビーの中で存在感を出すことができるかが焦点だった。

 今シーズン、サンウルブズの指揮官にはフィロ・ティアティアコーチがヘッドコーチ(HC)に昇格する形となった。トヨタ自動車でプレーしていたこともある元ニュージーランド(NZ)代表のティアティアHCは昨季もチームに関わっていたこと、また2016年9月に日本代表のHC並びに「チームジャパン2019総監督」に就任したジェイミー・ジョセフ氏との連携を考えた上で、選ばれた。

 ティアティアHCは「RISE AS ONE(チーム一丸となって成長していく)」をスローガンに掲げ、「まだまだ若いチームですが、新しいチャレンジにも向かいながら、チームをより飛躍させていくシーズンにしたい。我々はまだ2年目、このチャンスを活かして、スタンダード、カルチャー、パフォーマンス自体を上げていきたい」と意気込んだ。

 サンウルブズのスーパーラグビー参入は、もともと、2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップに向けて、日本代表を強化することが主たる目的だった。ティア1(=世界ランキング上位10チーム)同等の、選手に強度の高い試合を経験させることが狙いだった。

 そのため、1年目は外国のチームのキャップホルダーの選手も何人か選ばれていたが、2年目の今年は、より「日本代表=サンウルブズ」が強調されることになり、当初、発表されたサンウルブズのスコッドも51名中、50名(最終的には59名のスコッドとなり、51名が試合に出場)が日本代表または今後日本代表資格を取得可能な選手で構成されることになり、日本代表のコーチがサンウルブズの強化にもあたることになった。

 ただ、開幕前から危惧されていたことも多々あった。

 今年も日本のシーズンが終わってから、スーパーラグビーが開幕まで1ヶ月に満たないため、サンウルブズはもっとも準備期間が少ないチームであることには変わらなかった。

 また今年は、南アフリカ勢はもちろん、昨年のオーストラリアカンファレンスではなく、近年、調子のいいNZカンファレンスの5チームと対戦し、しかもホーム扱いの試合は1試合減って7試合になった。シンガポールの試合は3試合と昨季と変わらなかったが東京での試合は4試合しかなく(昨季5試合)、さらに今季はアルゼンチン遠征もあったため、総移動距離は10万kmを超えた。

 さらにジョセフHCは総監督という立場で、トップリーグやテストマッチも戦い試合数の多い日本代表選手に一定の休養を与えるため、「試合数を33試合前後にコントロールしたい」。スコッドの人数も昨年の42人(試合に出場した選手は38人)から、ケガ人も増えたこともあり、結局は60人近くまで増えて、選手をいわゆる「ターンオーバー制」で起用していく中で、どうチームを強化していくかは大きなチャレンジだった。

 そんな中、2年目の〝日出る国のオオカミ〟たちの挑戦が始まった。

 開幕戦はホームに昨季の王者ハリケーンズを迎えたが17-83と一蹴されてしまった。第2節も、昨季は同じ総勝ち点だったキングズにシンガポール23―37で敗れて、その後もアウェイでチーターズ、ブルズ、そしてシンガポールでストーマーズと対戦したが、善戦するものの勝利には遠かった。

 

 それでも多くの選手がスーパーラグビーデビューを飾ることになり、その中でもPR山本幸輝、伊藤平一郎、HO庭井祐輔、LOヘル ウヴェ、FL徳永祥尭、FL松橋周平、SO小倉順平、CTBティモシー・ラファエレ、WTB福岡堅樹、FB江見翔太らが躍動し、国際舞台での経験を積んだ。さらにSH田中史朗、FB松島幸太朗もサンウルブズデビューを飾った。

 今季の初勝利はBYE(休みの週)明けの4月8日の第7節だった。ホームに南アフリカの強豪ブルズを迎えて、ディフェンスで粘りを見せて21-20で競り勝ち、優勝経験のあるチームから初めての勝利を手にした。

 第8~11節の4試合は、サンウルブズにとって初のNZ&アルゼンチン遠征だった。その初戦は今季絶好調のクルセイダーズに一蹴され、翌週もハイランダーズに歯が立たなかった。それでも第10節のチーフス戦では20-27、さらに11節のジャガーズ戦でも39-46と善戦し、ツアーでは試合を重ねるごとに調子を上げていった。

 しかし、BYE明けの5月20日のシンガポールでのシャークス戦、27日の東京でのチーターズ戦では、ほとんどいいところなく17-38、7-47で敗れた。メンバーを固定できない影響もあり、遠征の調子の良さをホームで出すことができなかった。他のチームは、シーズンが深まるにつれて、だんだん調子を上げていくのと対象的だ。

 

 選手からは「所属チームでやっているラグビーと全然違う」「メンバーが変わると細かいところが詰め切れない」という声も聞かれた。

 6月の代表期間、スーパーラグビーは中断し、7月は残り3試合となった。ただ、日本代表戦が終わった当日に飛行機に乗って、南アフリカ遠征に出発した選手もいたほどの過密日程だった。そんな中、7月2日には敵地ヨハネスブルクの高地で行われたライオンズ戦に7-94と大敗。またメンバーを固定できない弊害が出てしまったと言わざるを得ない。しかもタックル成功率55%という数字は、キック戦術で戦っているチームとして不甲斐ない数字だった。

 続く9日、同じくアウェイのストーマーズ戦は試合の途中まで善戦したが、後半最後の20分にトライを量産されて15-52で大敗。最終戦で負けてしまうと、今シーズンは1勝、そして再び18位の最下位で終えてしまう……。

 

 そんな危機的状況の中、選手たちは奮起し、15日、ホームのブルーズ戦ではチーム一丸となって戦い、特にディフェンスで個々の能力の高い選手を止め続け、さらにアタックでもキックからのカウンター攻撃が機能して48-21で快勝した。

 この試合でメンバー入りした18人は、特にFWは先発全員が遠征組であり、4週間、メンバーをほぼ固定し、いっしょに戦ってきたことで、徐々に修正してチーム力を底上げしたことが功を奏した。もちろん「ホームのファンの前で、このままでは終われない」という気持ちの面でも相手を上回ったことが大きかった。

 選手の休養も考慮してターンオーバー制で戦うことは、今季25人の選手に新たにスーパーラグビーデビューを果たし、経験を積ませることができたという利点はあった。だが、やはり、メンバーを固定できなかったことにより、チーム力をシーズン後半に向けて上げていくことはなかなか難しかったと言えよう。

 

 日本代表やサンウルブズの試合に出た選手は、トップリーグの試合で休ませるかどうかなどは現在検討中で、今後は改善される見通しだ。

 スクラムやアタックに関しては通用していた部分が多々あった。ただ、なかなか組織ディフェンスを整備することはかなわず、失トライ96、得失点差-356点は改善すべき点であろう。

 また今季は移動が多く、試合のための調整に多くの時間が充てざるを得なかったため、フィジカルやフィットネスは個人的にしっかりと管理、調整できる選手以外は落ちてしまったことも否めない。他のチームよりもケガ人が多く出たことも踏まえて、S&Cをどう高めていくかも課題の一つとなった。スーパーラグビーのシーズン以外にも選手を集めて、戦術の確認やトレーニングすることも必要かもしれない。

 サンウルブズを運営するジャパンエスアールの渡瀬裕司CEOは「昨季は1勝でしたが、パフォーマンス含めて、スーパーラグビーデビューが20人以上おり、間違いなく底上げできている。スーパーラグビーは20年以上やっているのに、2年目の我々は成長していると確信している。NZのチーム勝った2勝目は我々に素晴らしい財産になって来季につながると思います」と2年目のシーズンを総括した。

 さらに渡瀬CEOは「なかなか説明が難しいですが」と前置きした上で、「サンウルブズは日本代表のためにあるべきではない。サンウルブズが成功することで日本代表が強くなりますが、サンウルブズ=全員日本代表ということでなくてもいい。結果を出すことで選手は自信をつけていく」と、1年目のように、数人ながら、将来的にも日本代表になることができない外国人選手の獲得も示唆した。

 また総監督の立場にある日本代表のジョセフHCは2019年ワールドカップに向けて「秋以降にメンバーを固定していく」ということも明言している。確かに総数60人近いスコッドは多すぎるため、そのあたりをどう改善し、メンバーをある程度固定しつつ、サンウルブズを強化しながらも日本代表の結果に結びつけていくかは、ジョセフ氏とマネジメントサイドの腕の見せどころとなろう。

 スーパーラグビーは来季、18チームから再び15チームへと削減されて、サンウルブズは南アフリカからオーストラリアカンファレンスに移ることが決定した。オーストラリアの4チームとホーム&アウェイを戦い、さらにニュージーランド、南アフリカのチームと数試合ずつ戦うことになるだろうが、移動距離や時間が今年よりも減ることは間違いない。日本のシーズンも来年1月15日に終わり、準備期間も今年よりも増えることになる。

 昨季よりも今季は、少しだが成長した姿を見せることに成功したサンウルブズ。2018年のスーパーラグビー参入3年目のシーズンは、2019年に向けてさらなる成長曲線を描くことができるか――今季よりも強いサンウルブズが、今季以上の勝利を挙げてファンを沸かせることに期待したい。それが2019年のワールドカップにつながっていくはずだ。

◇サンウルブズ 2017年 結果

2勝13敗 総勝ち点12(内ボーナスポイント4) 

41トライ、失トライ96、315得点、671失点(得失点差−356)

アフリカカンファレンス1 4位(全体17位)

1節 2月25日 ●サンウルブズ 17-83 ハリケーンズ (NZ) @秩父宮

2節 3月4日 ●サンウルブズ 23-37 キングズ (南ア) @シンガポール

3節 3月12日 チーターズ(南ア) 38-31 サンウルブズ● @ブルームフォンテーン

4節 3月18日 ブルズ(南ア) 34-21 サンウルブズ● @プレトリア

5節 3月25日 ●サンウルブズ 31-44 ストーマーズ (南ア) @シンガポール

6節 BYE

7節 4月8日 ○サンウルブズ 21-20 ブルズ @秩父宮

8節 4月14日 クルセイダーズ(NZ) 50-3 サンウルブズ● @クライストチャーチ

9節 4月22日 ハイランダーズ(NZ) 15-40 サンウルブズ● @インバーカーギル

10節 4月29日 チーフス (NZ) 27-20 サンウルブズ● @ハミルトン

11節 5月7日 ジャガーズ (アルゼンチン) 46-39 ●サンウルブズ @ブエノスアイレス

12節 BYE

13節 5月20日 ●サンウルブズ 17-38 シャークス (南ア) @シンガポール

14節 5月27日 ●サンウルブズ 7-47 チーターズ (南ア) @秩父宮

15節 7月2日 ライオンズ (南ア) 94-7 サンウルブズ● @ヨハネスブルク

16節 7月9日 ストーマーズ (南ア)  52-15 サンウルブズ● @ケープタウン

17節 7月15日 ○サンウルブズ 48-21 ブルーズ (NZ) @秩父宮

記事提供者:斉藤健仁

試合情報

  • 2017.2.25(土)
    スーパーラグビー2017
    サンウルブズ 17 - 83 ハリケーンズ
    NO SIDE
  • 2017.3.4(土)
    スーパーラグビー2017
    サンウルブズ 23 - 37 キングズ
    NO SIDE
  • 2017.3.12(日)
    スーパーラグビー2017
    チーターズ 38 - 31 サンウルブズ
    NO SIDE
  • 2017.3.18(土)
    スーパーラグビー2017
    ブルズ 34 - 21 サンウルブズ
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  • 2017.3.25(土)
    スーパーラグビー2017
    サンウルブズ 31 - 44 ストーマーズ
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  • 2017.4.8(土)
    スーパーラグビー2017
    サンウルブズ 21 - 20 ブルズ
    NO SIDE
  • 2017.4.14(金)
    スーパーラグビー2017
    クルセイダーズ 50 - 3 サンウルブズ
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  • 2017.4.22(土)
    スーパーラグビー2017
    ハイランダーズ 40 - 15 サンウルブズ
    NO SIDE
  • 2017.4.29(土)
    スーパーラグビー2017
    チーフス 27 - 20 サンウルブズ
    NO SIDE
  • 2017.5.7(日)
    スーパーラグビー2017
    ジャガーズ 46 - 39 サンウルブズ
    NO SIDE
  • 2017.5.20(土)
    スーパーラグビー2017
    サンウルブズ 17 - 38 シャークス
    NO SIDE
  • 2017.5.27(土)
    スーパーラグビー2017
    サンウルブズ 7 - 47 チーターズ
    NO SIDE
  • 2017.7.2(日)
    スーパーラグビー2017
    ライオンズ 94 - 7 サンウルブズ
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  • 2017.7.9(日)
    スーパーラグビー2017
    ストーマーズ 52 - 15 サンウルブズ
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  • 2017.7.15(土)
    スーパーラグビー2017
    サンウルブズ 48 - 21 ブルーズ
    NO SIDE

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