《全文掲載》エディー・ジョーンズHCが今大会を総括「ジャパンを愛している」

ラグビーワールドカップ2015 - 《全文掲載》エディー・ジョーンズHCが今大会を総括「ジャパンを愛している」

アメリカ戦の翌朝、イングランドでは最後となる記者会見に臨んだ日本代表エディー・ジョーンズHC。

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10月12日英国時間朝、ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)とリーチ マイケル主将、日本ラグビー協会の坂本典幸専務理事による大会総括記者会見が行われた。初の3勝(1敗)という輝かしい結果を残した日本代表は、2003年大会以降3勝1敗のチームとして初めて決勝トーナメントに進めなかった「史上最強の敗者」として、ラグビー史の記録と記憶に名を残す偉大なチームとなった。それをわずか4年で作り上げた名将エディー・ジョーンズHCの、戦地イングランドにおける最後のコメントを余すことなくお届けする。

《エディー・ジョーンズHC会見冒頭コメント》

おはようございます。昨日のゲーム(アメリカ戦)に関してですが、9位のチームとして終えられたことは日本にとってかなりの偉業です。やはりリーチ(マイケル)、リーダーシップグループ、選手たちの功績だと思っています。

ワールドカップでのパフォーマンスは、ずば抜けて素晴らしいものでした。ラグビーの質、意図と情熱、見せた勇気。それが今後、日本ラグビーのレガシーとして引き継がれていくでしょう。そして新しいファンや日本の子どもたちに刺激を与えられたことは、非常に素晴らしいレガシーになることでしょう。

ちょっと今日は変な気分です。次の試合に向けて準備をしない朝というのは少し変な感じがします。いつぶりでしょうか、今日は朝食を奥さんと一緒に食べました。まだ奥さんだといいのですが(笑)、そうだと願っています。非常に楽しみました。

日本には新しいヒーローが誕生しました。どのヒーローもハードワークを続けることが必要です。そうすれば成功が続くでしょう。

《以下、質疑応答》

──大会前、「全チームで最も印象に残るチームになりたい」とおっしゃっていた。この結果を受けて、それがどこまでできたと感じているか。

ジョーンズHC それは自分たちが判断することではありません。しかしファンのリアクションを見ていると、そのタイトル、称号に値する。戦い方を見ると、サポートしがいにあるチームという印象を与えられた。ワールドカップにまた違う風を吹かせたと思います。

(ラグビーは)パワーと衝突が起きるゲームですが、パワーでいうとその差が大きくありました。けれども、ゲインラインを超える方法を見つけて、工夫して、体を張って、そしてパワーがなくてもラグビーで勝てるということ証明できたと思います。

そしてラグビーというのは、どんな体格であれプレーできる。でも、そこがなくなりつつありました。大きい人しか勝てないというゲームに変わってきていました。しかし違う方法でも、しっかりと戦えるということをジャパンは証明した。アジアのラグビーをリードする国にならなければいけません。そして他のアジアの国々にもラグビーを戦ってほしいと見せる必要があります。

──今大会後の進路は。そして2019年の日本でのワールドカップで日本代表HCに復帰される可能性はあるか。また、その2019年大会でベスト8入りを期待する声もあるが、そのために日本代表がすべきことは。

ジョーンズHC ワールドカップ後はストーマーズ(スーパーラグビー・南アフリカカンファレンス)に11月1日から(HCとして)合流します。その後は(どうなるか)わかりません。日本は常に特別な場所でした。日本のラグビーは(自分にとって)近い存在であります。しかし未来のことは誰にもわかりません。

2019年(のラグビーワールドカップ日本大会で)、ジャパンが準々決勝に進出するのは非常に難しいでしょう。先ほど言ったように、パワーだけではなく違う方法で勝てるということを言いましたが、今ラグビーが進化している方向を見ると、そこのパワーの差を乗り越える方法を日本は探らなければいけない。(そのために必要な)鍵となるポジションの人数が足りません。

キンちゃん(LO大野均)が2019年もプレーできるかどうかはわかりません。彼は(4年後)41歳になっています。若手の優秀なLOはあまりいません。ジャパンが成功した要因は「経験を積んだ」ということ。日本代表はすべてのスコッドでおよそ550キャップでした。やはり経験値がものを言います。10キャップ、15キャップの選手はワールドカップでは通用しません。2016年からワールドカップまでに40キャップを積み重ねなければいけません。相手となる(チームの)LOは非常に経験値が高いので、そこが非常に痛いところです。

CTBの層も非常に薄い。CTBで戦えるパワフルな選手を育成しなければいけません。WTBもパワーが必要です。準々決勝進出にはいろいろなプランニングが必要となります。

ただ、もちろん不可能とは言っていません。もちろん可能です。けれども、しっかり問題を見極めて解決法を探らないといけません。

──今回の成功のためにはあれだけの時間を強化に使った。これ以上の成績を得るためには、プロないしプロに近い環境で選手を強化する必要があるのではないか。

ジョーンズHC プロというのはマインドセット(考え方・心構え)が大きく関わってきます。日本のすべてのチーム、高校からトップリーグまで、(費やせる)時間はプロと同じです。しかしマインドセットがプロではない。そこが変わらなければいけません。それを代表チームでは変えることができました。

ただトレーニングのためにトレーニングするのではない。ミーティングで誰にも質問されなければいいなと思っていてはいけない。相手の分析をしっかりしないのではいけない。勝手にそうなったのではなく、日本の大学は居心地がいい(からそうなった)。いい選手はいい企業に入れて、絶対に先発で、コーチからは何も言われない。そして選手たちが育たない。

強調したいのは、(日本のプレーヤーの)ポテンシャルは高いが、マインドセットが変わらないといけないということ。そこは協会の責任ではなく、各チームの責任です。マインドセットを変えることはできる。選手たちをベストプレーヤーにするために、何が何でもいろいろなことをやらせる。

今の若手は、桜のジャージーを着たいと思っている選手が多い。しかし、それをやるにはどれだけの苦労が必要か理解してくれていると思います。かなりポテンシャルの高い選手たちがたくさん出てくるでしょう。そういう選手たちが育てば、準々決勝に進出するという目標が具体化されるでしょう。

──これでジャパンのHCとしては最後。この4年間、今考えると後悔はないか。

ジョーンズHC コーチ歴が長いので、後悔は残しません。ミスは誰でもあります。この4年間でもジャパン(の指導)でミスはありました。しかしそのミスから学びました。なので、後悔はありません。非常に楽しみました。

──南アフリカに勝って3勝1敗という結果はどれくらい想定していたか。

ジョーンズHC 全試合に勝ちたかった。非常に良いパフォーマンスができれば全勝できると思っていました。(勝った)3試合は非常に良かった。しかし(負けたスコットランド戦では)50分間は良いプレーができましたが、何かの原因で(パフォーマンスが)低下しました。それが準々決勝に入れなかった要因です。

ワールドカップの歴史の、そして日本のラグビーの歴史を振り返ると、昨日(アメリカ戦)はジャパンにとってのワールドカップ決勝戦のような試合でした。3勝、そしてこのクオリティーのラグビーを見せられたのは非常に素晴らしいことです。

グラハム・ヘンリー(前ニュージーランド代表HC)が新聞で、イングランドがニュージーランドのラグビーを真似しようとしているとコメントしていましたが、その記事を読んで思ったのは「日本は独自のプレースタイルを持っているということに誇りを持つべきだ」ということです。

そして、未来のことは自分のコントロール外ですが、その自分たちの独自の戦い方を継続する勇気をも持ってほしいと思っています。(日本代表は)世界のラグビーに違う局面を与えたと思います。ワールドカップの他のチームを見ると、同じような戦い方をするチームが多く同じことを繰り返している。しかし日本はワールドカップに戦い方のバリエーションを与えた。ですからその戦い方を継続する勇気を持ってほしいです。

──長いコーチング歴の中で日本代表はどういう位置付けか。また、自分の予想を超えて成長した点は。

ジョーンズHC すべてのチームを愛しています。ジャパンも愛しています。自分の中に日本人の血が流れているので、特別な感じはある。

一番成長したのはセットピース(スクラム・ラインアウト)です。80分間戦い続ける身体的能力は選手たちの功績です。そしてマルク・ダルマゾ(スクラムコーチ)、スティーブ・ボーズウィック(FWコーチ)、JP(ジョン・プライヤー。ストレングズ&コンディショニングコーディネーター)は素晴らしい仕事をしてくれました。特にJPほど強化するために働いてくれた人はいません。ジャパンに人生を捧げたような男です。

時間の関係もあり、現地での記者会見は惜しまれつつ終わった。マイクを置いて会見場から出ていくエディー・ジョーンズHCに、報道陣から万雷の拍手が送られたことは言うまでもない。

記事提供者:K.S./R.S.