W杯への土台の構築、得た一体感と新戦力──日本代表2017秋総括

ラグビー日本代表 - W杯への土台の構築、得た一体感と新戦力──日本代表2017秋総括

日本代表は1勝1分2敗という成績だったが、実りのある秋のツアーとなった(撮影/齋藤龍太郎)

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2019年のワールドカップ(以下W杯)まで2年を切った2017年秋、昨年9月に就任したジェミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が率いるラグビー日本代表は4試合を戦った秋のシリーズを終えた。結果は1勝1分2敗と負け越したものの、指揮官が「すべての面で成長した」と感じたように、課題だけでなく得るものが大きかった1ヶ月間となった。

この秋のシリーズで日本代表(世界ランキング11位)は世界選抜戦を皮切りに、ホームでオーストラリア代表(同3位)と、そして場所をフランスに移してトンガ代表(同14位)、フランス代表(同8位)と、すでに日本代表同様に2019年ワールドカップ出場を決めている強豪3か国と対戦した(※世界ランキングはいずれも対戦当時)。まず結果から振り返ってみよう。下記のようになった。

10月28日 ●日本代表 27-47 世界選抜@福岡・レベスタ

11月04日 ●日本代表 30―63 オーストラリア代表@神奈川・日産スタジアム

11月18日 ○日本代表 39-6 トンガ代表@フランス・トゥールーズ

11月25日 △日本代表 23-23 フランス代表@フランス・ナンテール

1ヶ月あまりで強豪4試合と対戦するスケジュールは、2019年W杯の日程に近い〝仮想W杯〟とも見て取れた。ただ、実際には国内リーグであるトップリーグが終わって中5日で世界選抜と、さらに中6日でオーストラリア代表と対戦し、ジョセフHCも「あまりにも(準備の)時間が少なすぎた」と振り返った。

また10月に秋のシリーズを控え、トップリーグ期間中にミニキャンプを3回実施したとはいえ、2年後のW杯を見据えて、ジョン・プラムツリーディフェンスコーチが就任するなど攻守にわたって新しい戦術を導入したばかりだったこともあり、特に世界選抜戦では7トライ、オーストラリア代表戦では9トライを喫してしまい、ディフェンスのもろさが目立った試合となってしまった。

ただ日本代表はオーストラリア代表戦後、ほとんど休むことなく渡仏して、トンガ代表、フランス代表に向けた準備をしたことが功を奏したと言えよう。「遠征に行くと結束感が生まれて、一体感が増した。1週間多く時間を過ごしたことによって、前の2試合の反省を活かしたチーム作りをして、次の2試合で誇れるようなパフォーマンスが出せた」(ジョセフHC)

実は日本代表はフィジカルの強いトンガ代表を、近年、苦手にしていた。2011年のワールドカップでも18-31で敗れて、エディー・ジャパン時代も2012年、2013年、2015年と3連敗を喫していた。

しかし、指揮官が言うとおりジェイミー・ジャパンはトンガ代表戦では目の覚めるようなパフォーマンスを見せる。過去2戦より個々のタックル精度も上がり、11月から導入した組織ディフェンスもただ、前に出るだけでなく、ディフェンスの人数が足りないときは、しっかりと待って流れてと進化を見せていた。FLリーチ マイケルキャプテン曰く「選手たちから考えてした」という。

またHO堀江翔太、NO8アマナキ・レレィ・マフィを接点の横にそれぞれ配置する新しいアタック戦術も機能し外でトライを得たり、モールからトライを重ねたりするなど5トライを挙げて、守ってはノートライに抑えて39-6と快勝を収めた。2019年W杯で同じ組で対戦する仮想サモア代表と考えると、フィジカルバトルで互角以上に戦ったことは大きな成果になったはずだ。

そして秋のシリーズ最終戦となる世界ランキング8位のフランス代表戦を迎えた。過去9戦全敗の強豪相手だが、2019年W杯でベスト8進出を目標にし、同じヨーロッパ勢のアイルランド代表、スコットランド代表と同じ組に入った日本代表にとっては、真価が問われる一戦となった。

尻上がりに調子を上げてきた日本代表は、相手が過去3度W杯で準優勝している相手にも臆することなく、パスとラン、キックを交えたスピードあるアタックで仕掛け、前の試合に続いてディフェンスも健闘する。

前半24分はボールを展開してHO堀江が、後半2分はCTBラファエレ ティモシーがトライを挙げてクロスゲームに持ち込む。後半33分ヴァル アサエリ愛がトライを挙げて、残念ながらSO田村優のゴールは決まらなかったが、23―23の引き分けで終えて、初めてフランス代表と引き分けることに成功した。

昨年の敵地でのウェールズ代表戦(30-33)と同様に、遠征に行って、ある程度時間をかければしっかりと本来持っている実力を発揮できることを証明したシリーズとなった。やはり、日本代表は2015年W杯よろしく、テストマッチを行う前にチームとしてしっかりと準備し、戦略、戦術理解を深めれば世界の強豪と十分に戦うことができるレベルまで来ていると言えよう。

また、このシリーズでも存在感を見せていたように、FLリーチキャプテンを筆頭に、HO堀江、NO8マフィ、PR稲垣啓太、SH田中史朗、CTB立川理道、WTB福岡堅樹、FB松島幸太朗、2015年W杯に出場したメンバーがチームの根幹であることは変わらない。

ただ昨秋のテストマッチのケガから復帰し、トンガ代表戦で2トライを挙げたWTBレメキ ロマノ ラヴァ、このシリーズから代表入りしたPR具智元、FL/LOヴィンピー・ファンデルヴァルト、姫野和樹といった新戦力の奮闘が光った。

ジョセフHCは2019年W杯を見据えて「複数ポジションができる選手」を高く評価しており、ファンデルヴァルトは本来FLながらLOとして身体を張り続けて、姫野はフランス代表戦ではFLとして先発したものの、LO陣のケガなどにより、LOでプレーする時間も長く、しっかりとチームに貢献していた。

今後、サンウルブズでプレーしていたLOサム・ワイクス、FL/LOヴィリー ・ブリッツらが代表入りすることも予想され、バックファイブ(LO、FL、NO8の総称)はよりいっそう層が厚くなる見込みだ。

またBK陣はある程度メンバーが固定されつつあり、ここから新しいメンバーが代表で定位置を確保するためには、トップリーグやサンウルブズでめざましい活躍をすることが欠かせないだろう。

このシリーズで出た課題に関しては、2019年W杯で日本代表はアイルランド代表、スコットランド代表、ルーマニア代表、そしてサモア代表と自分たちよりフィジカルに長けたチームと対戦するため、ジョセフHCは「FWが自分たちより大きい。間違いなく言えるのはフィットネス、フィジカルが足らない」と言い、リーチキャプテンも「ゲームプラン、ディフェンスがしっかりできても、体力面で足らない。体力を上げれば、もっともっと自分たちのラグビーできる」と指摘した。

一方でこの1ヶ月で得たことも大きかったと言えよう。リーチキャプテンは「チームがより一体感持って、成長できた遠征でした。チームのカルチャーが見えてきて、戦術理解や理解する努力も高まってきた。トンガ代表に勝ったし、プロセスが結果につながって、みんな(やっているラグビーを)信じはじめている」と手応えを口にした。

またジョセフHCも「(11月のシリーズで)間違いなくいい土台が作れた。いっしょに過ごしてみて感覚や選手の特性、個性をつかむことができた。またW杯の対戦相手がどのチームがわかって、選手たちのことも把握できたので、このままW杯に向けて進んでいけると思います」と先を見据えた。

日本代表の今年の活動は幕を閉じた。今後、選手たちはトップリーグ、2018年よりジョセフHCが指揮官を兼任することになったスーパーラグビーのサンウルブズに戦いの舞台を移すことになる。いずれにせよ、ジェイミー・ジャパンにとって2019年W杯に向けて大きなステップの一つとなり、大きな収穫を得た秋のシリーズとなった。

記事提供者:斉藤健仁