新生ジェイミー・ジャパン始動 ~真価が問われる秋の“仮想W杯”4連戦~

ラグビー日本代表 - 新生ジェイミー・ジャパン始動 ~真価が問われる秋の“仮想W杯”4連戦~

日本代表強化合宿で熱のこもった指導を行うジェイミー・ジョセフHC。(撮影/齋藤龍太郎)

  • シェアする

ジェイミー・ジャパン、2年目の挑戦が始まる。

昨年9月、2019年ラグビーワールドカップ(W杯)を見据え、ラグビー日本代表の指揮官にニュージーランド出身のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が就任してから1年が経過した。ジョセフHCは現役時代、ニュージーランド代表だけでなく、日本代表、そしてサニックス(現・宗像サニックス)でプレーしたFWで「世界も日本も知る」人物ということで白羽の矢が立ち、日本代表を強化してきた。

10月末から11月にかけては世界的に「ウインドウマンス」と呼ばれる代表活動期間で、世界ランキング11位のラグビー日本代表は下記の相手と対戦する。約1ヶ月で4試合というのはW杯本番の予選プールと似た日程で、対戦相手も「ティア1(※おおむね世界ランキング10位以内のチチーム)」と言われるオーストラリア(同3位)とフランス(同8位)の強豪、さらにトンガ(同13位)と、日本代表よろしくW杯出場を決めている3チームと対戦できる ため、W杯に向けていいシミュレーションとなるはずだ。ジョセフHCも「全部勝ちたい」と意気込んでいる。

<ラグビー日本代表 秋のシリーズ日程 >

2017年10月28日 日本対世界選抜@福岡・レベスタ

2017年11月04日 日本対オーストラリア@神奈川・日産スタジアム

2017年11月18日(日本時間19日) 日本対トンガ@フランス

2017年11月25日(日本時間26日) 日本対フランス@フランス

ジョセフHCが日本代表の指揮官に就任して以来、アジア以外の対戦成績は「格上に勝てていない」と本人が言うとおり2勝5敗と負け越している。格下のルーマニア、ジョージアには勝利したが、格上のアルゼンチン、ウェールズ、フィジー、アイルランドには敗戦した。

ニュージーランド出身の指揮官は、ウェールズ代表とは善戦したように、日本代表のアタックについては「素晴らしい(相手の)ディフェンスに対してトライを取る力はある」と満足している様子を見せたが、ディフェンスに関しては「最大の課題であり、非常に大事な側面だと思う」と述べた。アタックの戦術は継続強化していき、ディフェンスシステムをリニューアルしてどこまで強豪相手に失点を抑えることができるかが焦点となる。

ディフェンスの課題を克服するために、ジョセフHCはただ手をこまねいているわけではない。ウェリントン時代4年間ともに戦ったジョン・プラムツリーをディフェンスコーチとして招聘。2016年にはハリケーンズのスーパーラグビー優勝に貢献したプラムツリーDFコーチがどんな手腕を発揮するのか注目が集まる。「ジョンがディフェンスでどんなことを考えているか、チームの中で共有して落とし込んでチームに反映させいきたい」(ジョセフHC)

また「若くてこれから成長してくれる選手がいる一方で経験のある選手も入った。バランスが取れている」とジョセフHCが招集した秋シーズンのメンバー35名は、2019年W杯本番を見据えた選出であることがうかがえる。

キャプテンは今秋からFLリーチ マイケルが復帰した。リーチキャプテンに対してジョセフHCは「彼は生まれながらの天性のキャプテンです。フィールドの上でも信頼でき、キャプテンとしての経験も豊富です」と評価する。

選考基準として指揮官が大事にしたのは「複数ポジションができる」ことが挙げられる。試合が続くことからケガ人が出た場合や、FWの強いトンガ、フランスと対戦するときに控えを通常のFW5人、BK3人ではなく、FW6人、BK2人として戦うためだ。

例えばLOファンデルヴァルト、LOヘルはバックローとしてもプレー可能で、FL姫野もLOとしてプレーができる。またBKを見てもSH内田はWTBで、SO松田はCTBで、CTB立川はSOで、WTBサウはCTBで、FB松島はCTBでもWTBでもプレーが可能である。いずれにせよ、ジョセフHCやコーチングスタッフがW杯本番を強く意識していることがうかがえる。

ただ、少し不安な点がある。BKはWTBサウが代表に復帰したことにより、15人中2015年W杯組が7人と経験豊富な選手が揃うが、FWは19人中4人しか2015年W杯を経験したメンバーがおらず、14人が10キャップ以下で、5人がノンキャップという若いメンバーで臨むことになる。

来年になれば、サンウルブズで存在感を示しているLOサム・ワイクス(パナソニック)、LO/FLヴィリー・ブリッツ(NTTコミュニケーションズ)らが代表資格を得て、日本代表入りすることが可能になることを考えると、現在のメンバーは秋のシリーズでアピールすることが欠かせない。

ジョセフHCは来年から日本代表だけでなくサンウルブズのHCに就任することが決まり、日本代表とサンウルブズの強化を一本化されることにもなった。5月にはジョセフHCが「(W杯に向けて)秋以降、メンバーを固定していく」と明言しており、薫田真広強化委員長が、秋のシリーズが終了した後、メンバーの入替は随時あるものの30名をめどに「ワールドカップトレーニングスコッドを立ち上げたい」と表明した。

W杯まであと2年を切ったこともあり、ある程度メンバーを固定しつつ、トップリーグチームの協力を得ながら、ジョセフHCが選手を管理していくというわけだ。FWだけでなBKの選手も、秋のシリーズでしっかりとしたパフォーマンスを見せていくことが、今後につながっていく。

日本代表は10月28日の初戦で世界選抜と対戦する。ジョセフHCも「秋のツアーでは最初の2週間が大事」と言うように、まずは最初の2週間、11月4日にニュージーランド代表を破ったばかりのオーストラリア代表と対戦するまでに、どこまでチーム力を上げることができるかが焦点となろう。ジョセフHCも「どんな試合でも全力を尽くすのに変わりないが、最初に挑むべき戦いはオーストラリア戦」と意気込む。そしてフランスへと移動し、フィジカルチームであるトンガ、フランスにどういった戦いを見せるかも楽しみだ。

いずれにせよ、まず初戦に勝利して勢いに乗りたいところだ。そしてジェイミー・ジャパンになってから初めてとなる上位チームから初白星を挙げて、今後、つまり、2019年W杯につながるような素晴らしい試合を見せてほしい。

◇日本代表メンバー 秋シーズンメンバー35名(FW19名、BK15名)

☆2015年W杯出場メンバー

PR1石原慎太郎(サントリー/明治大出身、6キャップ)

PR1稲垣啓太(パナソニック/関東学院大出身、16キャップ)☆

PR1山本幸輝(ヤマハ発動機/近畿大出身、4キャップ)

HO坂手淳史(パナソニック/帝京大出身、8キャップ)

HO日野剛志(ヤマハ発動機/同志社大出身、4キャップ)

HO堀江翔太(パナソニック/帝京大出身、52キャップ)☆

PR3浅原拓真(東芝/法政大出身、8キャップ)

PR3ヴァル アサエリ愛(パナソニック/埼玉工業大出身、0キャップ)

PR3具智元(ホンダ/拓殖大出身、0キャップ)

LOヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ/ネルスプロイト高[RSA]出身、0キャップ)

LOヘル ウヴェ(ヤマハ発動機/拓殖大出身、6キャップ)

LO谷田部洸太郎(パナソニック/国士舘大出身、15キャップ)

FL布巻峻介(パナソニック/早稲田大出身、3キャップ)

FL姫野和樹(トヨタ自動車/帝京大出身、0キャップ)

FL松橋周平(リコー/明治大出身、8キャップ)

FLリーチ マイケル(東芝/東海大出身、50キャップ)☆ ◎キャプテン

FL徳永祥尭(東芝/関西学院大出身、7キャップ)※10月22日追加招集

No.8アマナキ・レレイ・マフィ(NTTコム/花園大出身、16キャップ)☆

No.8フェツアニ・ラウタイミ(トヨタ自動車/摂南大出身、0キャップ)

SH内田啓介(パナソニック/筑波大出身、22キャップ)

SH田中史朗(パナソニック/京都産業大出身、61キャップ)☆

SH流大(サントリー/帝京大出身、6キャップ)

SO田村優(キヤノン/明治大出身、45キャップ)☆

SO松田力也(パナソニック/帝京大出身、9キャップ)

WTBマレ・サウ(ヤマハ発動機/タンガロア高[NZ]出身、27キャップ)☆

WTB福岡堅樹(パナソニック/筑波大出身、23キャップ)☆

WTB山田章仁(パナソニック/慶應義塾大出身、23キャップ)☆

WTBレメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ/ランコーン高[AUS]出身、2キャップ)

CTB立川理道(クボタ/天理大出身、51キャップ)☆

CTBシオネ・テアウパ(クボタ/流通経済大出身、0キャップ)

CTB中村亮土(サントリー/帝京大出身、11キャップ)

CTBティモシー・ラファエレ(コカ・コーラ/山梨学院大出身、5キャップ)

CTB山中亮平(神戸製鋼/早稲田大出身、11キャップ)※10月23日追加招集

FB野口竜司(東海大4年/東海大仰星高出身、11キャップ)

FB松島幸太朗(サントリー/桐蔭学園高出身、25キャップ)☆

※LOアニセ サムエラ(キヤノン/フィジー工科大出身、7キャップ)→家庭の事情のため不参加

◇ジョセフHCが就任してからの日本代表の戦績

これまでのジェイミー・ジャパンのテストマッチを振り返っておこう。就任直後の昨年の11月のテストマッチシリーズは、ウェールズにはアウェイで善戦するものの、格下のジョージアにしか勝利できず1勝3敗。また今年6月の3連戦も同様で、世界ランキングが下のルーマニアには勝利したものの、2019年W杯で同組に入ったアイルランドには力負けしてしまい1勝2敗。若手中心で戦ったアジアとの対戦を除けば2勝5敗と上位チームに勝利できていないのが実状であり、秋のシリーズでどうにか上位から白星を奪いたいところだ。

2016年11月05日 ● 日本 20-54 アルゼンチン

2016年11月12日 ○ ジョージア 22-28 日本

2016年11月19日 ● ウェールズ 33-30 日本

2016年11月26日 ● フィジー 38-25 日本

2017年6月10日 ○ 日本 33-21 ルーマニア

2017年6月17日 ● 日本 22-50 アイルランド

2017年6月24日 ● 日本 13-35 アイルランド

記事提供者:斉藤健仁